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ポリエチレン(PE)樹脂とは?素材の特徴・用途・材質について解説

素材解説2023.01.05

ポリエチレン(PE)とは?

ポリエチレンはプラスチックの一種であり、世界で一番生産量が多く原材料が安いプラスチック素材です。
炭素原子と水素原子だけから構成(※)された、エチレンと呼ばれる無色透明の気体を使用して作られます。
非常に単純な構造でできるため、様々な加工方法に対応ができ、非常に扱いやすいことが大きな特徴です。食品包装や洗剤のボトル容器などの身の回りのものから、水道管やガス管などの様々な用途に利用されています。
本記事では、ポリエチレンの製法や用途、特性について詳しく解説していきます。

※ポリエチレンの化学的な構造は、エチレン(CH2=CH2)が重合した高分子化合物であり化学式は(CH2CH2)nです。重合とは、1種類もしくはそれ以上の分子が化学結合をすることで元の分子より大きな分子量の化学物質を形成することを指します。

ポリエチレン(PE)の歴史

ポリエチレンは1898年にドイツの化学者ハンス・ヴォン・ペヒマンがジアゾメタンという有毒ガスの研究中に偶然発見されました。
その後、1930年代に高圧合成法と呼ばれる工業的な合成法が発明され、1951年にアメリカで酸化クロム、さらに1953年にはドイツでチーグラー・ナッタ触媒という触媒が開発されたことで、高性能なポリエチレンを安価で製造できるようになりました。それ以降では世界中に広くポリエチレンが普及するようになり、現在ではプラスチック製品の中ではポリエチレンが一番利用されるようになりました。

ポリエチレン(PE)の製法と用途

ポリエチレンは、利用用途に合わせて複数の加工方法があります。今回は代表的な3つの加工方法をご紹介します。

製法 特徴 用途例
射出成形 ・仕上げの加工が最小限で済む
・大きなサイズや複雑な形状でも加工できる
ビール用コンテナ、コンテナ
押出成形 ・同じ断面の製品を安定して作れる カップ麺の蓋、水道管、ガス管
中空成形 ・空洞がある製品に対応しやすい ガソリンタンク、洗剤のボトル類

射出成形の用途や製品

射出成形とは、プラスチックを約200℃近い高温で溶かして、高圧で金型の中に流し込んだあとに冷やすことで成形を行う加工方法です。製造の際に、注射器で液体を送り込む様子に見えることから射出成形と呼ばれています。

射出成形のメリットは生産性が高いことと、クオリティが高いプラスチックパーツが作成できることが挙げられます。射出成形で作られる製品の例としては、ビール用のコンテナやコンテナなどです。

射出成形はプラスチック製品の代表的な加工法であり、プラスチック製品の7〜8割はこの射出成形によって加工されています。

押出成形の用途や製品

押出成形は、加熱して溶かしたプラスチックを金型に流し込んで圧力を加え、型枠からところてんのように押し出して成形します。金型から出てきたプラスチックを冷却して固めた後に、カット機で一定の長さに切断するため、金太郎飴のようにどこを切っても同じような形状となるのが特徴です。

金型の内部で樹脂を冷却して固めないという点で他の成形方法と異なります。そのため、その日の気温・湿度・水温などの外部要因を考慮してマニュアル操作を行うことが必要です。

押出成形で作られる製品としては、カップ麺の蓋やスープの袋、飲料パック、食品包装があります。

中空成形の用途や製品

中空成形とは、加熱して溶かしたり柔らかくしたりしたプラスチックを金型に入れて円筒状にし、吹きガラスを作るように樹脂に空気を吹き込んで膨らませて、金型に押し当てることで成形を行う加工方法です。別名、ブロー成形とも呼ばれています。

射出成形と比べると金型が簡素になり、金型の制作費用が安くなるというメリットがある一方、金型に触れない内側の面の精度をコントロールするのが難しいというデメリットがあります。したがって、空洞がある樹脂成形品の大量生産に適した成形方法です。

中空成形で作られる製品の例としては、ガソリンタンクやドラム缶、洗剤などのボトルなどがあります。

ポリエチレン(PE)の材質やメリット・デメリット

ポリエチレンの主なメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット デメリット
・寒さに強い(耐寒性が高い)
・安価で加工しやすい
・水や油で変形しない(防水性・耐油性が高い)
・薬品で変形しない(耐薬品性が高い)
・電気を通さない(絶縁性が高い)
・材料自体は無害・無毒
・火や熱に弱い(耐熱性が低い)
・紫外線に弱い
・接着性が悪い
・傷が付きやすい

その中でも主な長所と短所について詳しく説明していきます。

ポリエチレン(PE)のメリット

寒さに強い

ポリエチレンは寒さに強いというメリットがあります。-20℃くらいの温度までであれば、変形することがありません。冬に屋外で利用するパイプなどのような用途にも対応できます。

安価で加工がしやすい

ポリエチレンは、加熱することで柔らかくなるような特徴を持つ熱可塑性樹脂です。射出成形や押出成形、真空成形、圧空成形、ブロー成形など様々なプラスチック成形をすることができ、加工がしやすいというメリットがあります。それに加えてポリエチレンは安価であるため、大量生産される製品への使用に向いています。

水・油・薬品によって変形しない

ポリエチレンは防水性に優れているというメリットがあります。ポリエチレンの吸水率は0.01%以下と非常に低く、水をほとんど吸わないという性質があります。油や薬品に反応して変形したり、劣化してしまったりする可能性が低いという性質もあります。そのため、保存容器や配管素材をはじめ、ガスタンクといったような製品にも利用されています。

絶縁性が高い

ポリエチレンは絶縁性が高く、電気をほとんど通さないという性質があります。そのため、電線を保護する材料や、通信機器の絶縁材料などに利用されています。

ポリエチレン(PE)のデメリット

火や熱に弱い

ポリエチレンは70度以上では変形したり、燃えてしまったりするため、火の近くや高温になる環境が想定される用途での使用には不向きであるというデメリットがあります。

紫外線に弱い

ポリエチレンは紫外線に弱いため、直射日光が当たる環境では劣化が早くなってしまうため、直射日光があたりやすい屋外での利用にはあまり向いていません。屋外で使用する場合は、安定剤などを入れて劣化を防止する必要があります。

接着性に悪い

ポリエチレンは、接着性が悪いという性質を持つため、そのまま接着剤でつけることは難しいです。そのため、塗装や印刷をする際には下処理をしなければならず、少々コストがかかってしまいます。

傷がつきやすい

ポリエチレンは柔軟性に優れているが故に傷がつきやすいため、強い力を加えたり、尖ったものに接触させたりするような場所での利用には不向きであるというデメリットがあります。

デメリットを打ち消す添加剤

上に述べたようにポリエチレンにはデメリットもありますが、それを打ち消すために添加剤をいれて対処することができます。具体的には「滑剤」「アンチブロッキング剤」「酸化防止剤」などの添加剤です。

摩耗することを避けたい場合は、滑りやすくする滑剤をいれて、耐摩耗性を高められます。滑りやすくなることで加工のスピードや生産性を上げられる点も特徴です。

ポリエチレンは傷が付きやすい点もデメリットですが、アンチブロッキング剤とよばれる添加剤を入れて素材の表面をでこぼこさせることができます。素材同士が密着するのを避けて、傷つきを抑制する効果が期待できます。

ポリエチレン(PE)の種類と特徴

ポリエチレンはエチレンと呼ばれる無色の気体からできた素材であることを冒頭で説明しました。そしてそのエチレンの掛け合わせ方(重合方法)によって様々な種類のポリエチレンを作ることができます。

密度(kg/m^3) 特徴 用途例
低密度PE(LDPE) 910〜929 ・透明に近い
・滑らかな肌触り・柔らかい
・加工性が高い
包装用フィルム、電線被覆材料、ラップフィルム、透明ポリ袋
高密度PE(HDPE) 942以上 ・白っぽい
・硬くて引っ張りに強い
レジ袋用フィルム、ボトル、テープ、繊維、パイプ、灯油タンク
直鎖状低密度PE(LLDPE) 910〜925 ・透明クリア性に優れる
・引き裂きの影響に耐えやすい(引裂強度が高い)
・衝撃強度が高い
・柔らかい
包装用フィルム、ラミネートフィルム、食品、トイレタリー用ヒンジキャップ、ライナー

低密度ポリエチレン(LDPE)の特徴


低密度ポリエチレン(LDPE)は、名前の通り密度が低いポリエチレンであり色味は透明に近く、肌触りは滑らか、柔らかく加工性が高いという特徴を持ちます。耐熱温度は70〜90℃ほどで、重さは水よりも軽い点が特徴です。

この特性を生かして、ラップフィルムや、透明のポリ袋や包装材に用いられています。一方で、強度には乏しいために、重いものを入れるという用途には向いていません。

※低密度ポリエチレン(LDPE)は、エチレンを120~300℃、1,500~3,000atmという高温・高圧下で酸化クロム系触媒を用いて重合させることによって得られます。

高密度ポリエチレン(HDPE)の特徴


高密度ポリエチレン(HDPE)の色味は白っぽく、硬く、引っ張りに強いという特性を持ちます。耐熱温度は70〜90℃ほどで、低密度ポリエチレンよりも重くはなりますが、水よりも軽い点は同じです。

この特性を生かして、スーパーのビニール袋やビールケース、バケツなどの雑貨類、シャンプーや洗剤などのボトル容器、灯油タンク、それから上水道パイプやガスパイプなどにも用いられています。

※高密度ポリエチレン(HDPE)は、エチレンを1~6気圧、もしくは30~40気圧で重合させることによって得られます。

直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の特徴


直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の色味は乳白色半透明であり、フィルム成形した場合にはほぼ透明にはなるものの、透明度・外観は低密度ポリエチレンに若干劣ってしまいます。

しかし、耐水性や耐薬品性、耐熱性は低密度ポリエチレンより優れていますし、引き裂きにも強く、高い衝撃強度も持つという特徴もあります。コストパフォーマンスも優れているといった特徴があるため、市場への浸透が進んできています。

直鎖状低密度ポリエチレンの需要の50%以上はフィルムが占めていますが、食品包装などの軽包装から、米袋など比較的重量があるものを入れる重袋まで幅広い分野で製品化がされています。

※直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンに、ブテン(C4)、ヘキセン(C6)、オクテン(C8)、4-メチルペンテン-1のどれかを共重合させて得られます。

その他のポリエチレン

そのほかに、EVA樹脂、超高分子量ポリエチレンと呼ばれるものもあります。

EVA樹脂

EVA樹脂は、エチレンと酢酸ビニルを共重合させることによって得られるゴム状の素材です。一般的なポリエチレン(より透明性と柔軟性、対衝撃性、耐候性に優れています。また、接着性が悪いというポリエチレンのデメリットを改善しており、着色や塗装がしやすいのが特徴です。
これらの特性を生かして農業用フィルムやシート、パイプ、三輪車のタイヤ、サンダルなど、いろいろな分野でEVA樹脂が用いられています。

超高分子量ポリエチレン

超高分子量ポリエチレンは、スーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれる150℃以上にも耐えられる素材として分類されており、機械的特性を強化した高性能の素材になります。

一般的なポリエチレンよりも強度や耐候性、耐熱性、耐摩耗性などに非常に優れているという点が特徴的です。分子量が多くなると強度も強くなることが一般的ですが、一般的なポリエチレンの分子量は2万~30万ほどであるのに対して、超高分子量ポリエチレンの分子量は100万~700万あります。
強度が求められるような、スポーツ用品、製造におけるコンベアやガイドレールなどに使用されます。

ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)の違い

ポリプロピレンはポリエチレンの次に生産量が多いプラスチック素材です。

ポリプロピレンもポリエチレンと同様に、炭素原子と水素原子だけから構成された化学物質のため、ポリエチレンとポリプロピレンには共通点が多く存在します。炭素と水素からできる点は同じですが、プロピレンと呼ばれる化合物を重合する点で異なり、特徴にも違いがでてきます。

主な違いは以下の通りです。

ポリエチレン(PE) ポリプロピレン(PP)
柔らかさ 柔らかい 硬い
色味 半透明で白っぽい 無色に近い透明
耐候性(天候への耐久性) PE > PP
耐熱性(熱への強さ) PE < PP
速乾性 PE < PP
中空成形・ブロー成形のしやすさ PE > PP

ポリエチレン(PE)の原料と価格変動


ポリエチレンはエチレンを重合して得られるものと説明しました。エチレンはナフサと呼ばれるものを熱分解(クラッキング)して生成されます。

ナフサは原油を石油精製プラントで異なる温度や圧力で蒸留・分離して得られる石油製品であり、揮発性が高く未精製のガソリンであるため粗製ガソリンとも呼ばれています。

コロナ禍からの景気回復により原油需要が高まる一方で、ロシアのウクライナへの侵攻を背景に原油価格の高騰が続いていることと、アジア域内の堅調な需要の影響によりナフサの価格が上昇してきており、それに伴い、企業側やポリエチレンの価格の値上げを余儀なくされているというのが現状です。

原油価格レートの推移をモニタリングしたり、ニュースなどから予想を立てたりすることで、ポリエチレンの価格を想定することが可能です。

まとめ

本記事ではポリエチレンの特徴やポリエチレンを利用した製品について詳しく解説をしてきました。

ポリエチレンは加工性に優れて安価であるために、包装用フィルムや灯油タンク、水道パイプなどの身の回りの様々な製品に利用されています。一方で火や熱に弱いなどのデメリットも持ち合わせています。

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*1:製品在庫等の状況によります。

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